2024/05/09
品川区の歯医者 かなもり歯科クリニックの歯科衛生士の深澤です。
お口の中を清掃する道具と言えば『歯ブラシ』ですが、それ以外にも様々な道具や清掃方法があります。
ところで、歯ブラシだけでお口の中の汚れ(プラークとも言う、細菌の塊のこと)や、食べた物がどれだけ取れるかご存知ですか?
時間をかけて、力を込めて磨けば、ほとんど清掃できるのでしょうか。
………
その答えは、歯ブラシだけでは、お口の中全体のおよそ60%しか清掃できないと言われています。
つまり結論は「歯ブラシだけではダメ!!」です。残りの40%は主に、歯ブラシの届かない歯と歯の間の部分になります。歯と歯の間の歯ぐきは、表面の歯ぐきとは違いバリア機能がなく、細菌に簡単にやられてしまい炎症が起こりやすい部分です。
口は全ての入口、健康の入口です。口の中の悪玉菌たちは炎症した歯ぐきの毛細血管からだけでなく、食道から様々な臓器へと広がっていきます。悪玉菌は胃酸で死ぬと言われていましたが、それは空腹時だけのお話。胃を通りすぎて全身に広がり、がんや心疾患、認知症など万病の原因になることもあります。口の中だけでは終わらない、全身に関わる恐ろしいものなのです。
歯ブラシの届かない歯と歯の間には、今から紹介する補助用具が必要になってきます。今回は歯ブラシと、代表的な補助用具について詳しく紹介していきます!
お口の清掃といえば歯ブラシですね。歯ブラシには形や硬さ、毛先にも様々な種類があります。硬さには「かため」「ふつう」「やわらかめ」があります。毛先は、先端が丸い「ラウンド毛」、先端が細い「テーパード毛」、さらに細い「スーパーテーパード毛」があります。歯周病が進んでいる状態でなければ「ふつう」の「ラウンド毛」を選択していただければ問題ありません。「かため」が好きという方は、歯ぐきを傷付けないよう力加減に注意しましょう。力加減を間違えると、歯ぐきが傷付くだけでなく、歯も削れてしみる原因になってしまうからです。
使用時のポイントは、歯に密着させて細かく動かすことです!大きなストロークは、毛先が逃げてしまい汚れの取り残しが多くなってしまいます。歯に当てる力は優しめで問題ありません。強い力をかけなくても汚れは落ちます。歯ブラシの毛先がしっかり歯に当たっているかが重要になります。
また、歯ブラシの交換は衛生面も考慮して1か月を目安に行いましょう。毎日使うことで毛先は徐々に広がっていき、清掃効率が大きく下がってしまいます。自分に合っている歯ブラシがわからなかったり、自分の磨き方が問題ないか気になる…という方は、かかりつけの歯医者さんの歯科衛生士にぜひ質問してみてくださいね!
ここからは補助用具の話になります。冒頭で説明した、歯ブラシで磨けなかった残り40%の汚れを補助用具で取り切る必要があります。補助用具と言っても、種類がたくさんあり自分で何を選べばいいかわかりませんよね。そこで、それぞれの特徴や使い方を説明していきます。
歯間ブラシは歯と歯の間にある程度の隙間がある場所(ブリッジ、インプラント、矯正中、隣の歯がない場所の側面など)に使用する細長いブラシです。歯間ブラシにはつまようじのようなストレートタイプと、角度のついたアングルタイプがあります。どちらが良いのかは、ご自身が使いやすい方で問題ありません。
歯間ブラシにも毛の種類があり、ナイロン毛タイプとゴムタイプがありますが、清掃効率が良いのはナイロン毛タイプと言われています。サイズについては、隙間にピッタリよりも少し余裕のあるサイズを選びましょう。理由は、歯ぐきを傷付けたり、歯ぐきが下がって隙間が大きくなるリスクがあるためです。
使用時のポイントは、
①表側だけでなく裏側からも入れる!両側から入れて初めて歯間ブラシの100%の効果を発揮します!
②こする時は歯ぐきに押し付けない!上記のサイズの話と同様、歯ぐきを傷付け、歯ぐきが下がって隙間が広がる可能性があるためです!
上の歯で使う時は斜め下に向けて、下の歯で使う時は斜め上に向けて入れるようにするとスムーズになりますよ。ただし歯並びによっては入らない、入れづらい場所もありますので、難しいようでしたらコツを歯科衛生士に聞いてみてくださいね!
歯と歯の間にある程度の隙間がある場所に使用するブラシです。歯間ブラシと異なり、歯と歯の間だけでなく表面も磨ける、使い勝手の良いブラシになります。
普通の形の歯ブラシでは届きにくいような、一番奥の歯の裏側や、歯並びの悪い部分、生えかけの歯、インプラントの根元などをしっかりポイントで清掃できるよう、先が尖っているタイプがメジャーな形になります。
使用時のポイントは、毛先を歯に密着させ、小刻みに、または円を描くように動かすことです!
歯ブラシを奥に入れると嘔吐反射(歯ブラシを奥の方にいれると気持ち悪くなり、えずく症状)がある方は、小さいタフトブラシを使用することで嘔吐反射を抑えることができます。毛先が平らなカットになっているタフトブラシもあり、尖っているタイプより平らなタイプの方は大きな面積で当たるため、しっかりと磨くことができますのでおすすめです。
舌は、舌苔(ぜったい)という粘膜の表面が代謝によって剥がれ落ちたものや、細菌などが付着して白くなることがあります。この舌苔は口臭の原因になりますので、口臭が気になるという方はチェックしてみてはいかがでしょうか。胃腸が悪い時なども舌苔が多くなりやすいため、体が不調というサインにもなることがあります。
注意していただきたいのは、歯を磨いたついでに…と、通常の歯ブラシで舌を磨いてしまうことです。通常の歯ブラシですと舌に刺激が大きすぎて傷付ける原因となります。必ず歯ブラシよりも毛の柔らかい、舌専用ブラシを使用して清掃しましょう!
舌ブラシにもいくつか種類があります。ブラシタイプは舌の表面に無数にある小さな突起の間まで清掃することができます。しかし力加減を間違えると舌が傷付いてしまいます。ブラシがゴムになっているタイプも同様です。
ヘラタイプは細かな隙間には入りませんがブラシタイプより優しく、傷付けるリスクがそこまでないと言われています。
使用時のポイントは、
①奥から手前に、一方向に動かす
②力を入れすぎない
③無理をして奥まで入れすぎない(えずいてしまいます)
舌ブラシの回数は1日1回、おすすめのタイミングは起床時です!細菌は寝ている間に爆発的に増えるためです。
取れないからと言って力強く舌に当てすぎると、舌の表面にある味を感じる細胞を傷付けてしまい、味覚が鈍くなることがありますので優しく行ってくださいね。
使用後は歯ブラシ同様、よく洗い乾燥して保管しましょう。
手でしっかりと持てるホルダーが付いており、フロスを使用したことがない初心者の方やお子さまにも扱いやすいタイプになります。使用方法は糸タイプと比較すると簡単ですが、動かせる範囲が狭いため清掃性が低いことです。手軽に扱えて操作が簡単なため、患者様の中には普段は糸タイプで、疲れて気力がない時はホルダータイプと使い分けている方もいらっしゃいます。
ホルダータイプと違い、動かせる範囲が広く、常に新しい糸部分を使用することができるため、ホルダータイプと比較して清掃性が高いと言えます。
ただ操作方法が少し難しくコツが要るため、断念してしまう方も多いです。糸巻タイプを使い続けることができるのであれば、清掃性の高さから、ホルダーよりも糸巻タイプを使うことがおすすめです。
使用方法については、当院の過去記事を参考にしてみてください!フロスのワックス加工の違いについても紹介しております。
http://kanamorisika.com/blog/2024/01/04/10616/
強い水流で歯と歯の間を清掃する機械になります。フロスよりもさらに簡単に扱うことができます。ただし覚えておいていただきたいのが、ウォーターフロスでは歯と歯の間に挟まった食べ物は取れますが、細菌の塊は取り切ることができません!細菌たちは私たちが食べた物をエサに代謝し、ベタベタした足場を作って歯にくっつき生きるための場を作ります。ウォーターフロスを使用するとスッキリしますしマッサージ効果もあると言われていますが、ベタベタした組織は水流だけでは取り切れないため、必ず歯間ブラシやフロスを使用して「擦る」という作業が必要なのです!
洗口剤の中にも、むし歯や歯周病の予防、口臭、再石灰化の促進(フッ素)などこちらも様々な種類があります。歯ブラシと洗口剤を併用することにより、お口の中の細かい部分や粘膜にまで、殺菌などの薬用効果を得ることができます。
歯ブラシの後に洗口剤を使用したら、薬用効果を保つため水でゆすがないようにしましょう。アルコールを含んだ刺激の強いタイプもあるため、苦手な方はラベルをよくチェックしてノンアルコールを選択しましょう。
洗口剤の中にはあたかも洗口剤だけでお口の中がきれいになるように謳っているものがありますが、洗口剤だけで汚れは落としきれません!上記のウォーターフロスの項目と同じで、ベタベタした細菌たちを落とすには必ず「擦る」というような機械的な作業が必要になります!
当院おすすめの洗口剤など、こちらの記事で紹介しておりますのでぜひご覧くださいね!
http://kanamorisika.com/blog/2024/04/11/11377/
繰り返しにはなりますが、口は全ての入り口、健康の入り口です。歯ブラシだけでなく今回紹介させていただいた補助用具もしっかり使用してくださいね!歯ぐきの中などの用具が届かない部分は、プロである私たちにお任せください。ご自身で磨けていると思っていても磨けていない部分はどんな方でもあるものです。
磨き残しがあった部分を歯科医師・歯科衛生士からフィードバックすることを繰り返せばお口の中が磨けるようになります。ご自身での歯ブラシや使用している歯磨き粉など、何か気になることがございましたらお気軽にご質問ください!
定期的な検診で、お口だけでなく全身の健康を守っていきましょう!(健康な歯が多いほど、将来かかる医療費が減少するというデータもあります)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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