2024/04/25
品川区の歯医者 かなもり歯科クリニックの歯科助手 須藤です。
歯医者さんの検診で虫歯はないと言われたのに、
冷たいものを飲んだり、棒付きアイスをかじったときや歯ブラシを当てた際に歯にチリッとするような鋭い痛みがほんの一瞬出たことはありませんか?
その痛み、知覚過敏(ちかくかびん)かもしれません。
現在、日本人の4人に1人が知覚過敏であるというデータもあるほど、知覚過敏で悩まされている人はとても多いです。有病者率とすると、4.8%から62.3%であり、平均で33.5%の日本人が知覚過敏があると言われています。
知覚過敏がなぜ起こるのか、原因と対処法などを説明いたします。
目次
正式名は、象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)です。
歯に炎症や虫歯が無いにも関わらず、冷たいもの・あまいものの飲食時(温度刺激)や歯磨きの(機会的刺激)ブラシなどの際、寒い冬に口呼吸した時(乾燥)に一過性に鋭い痛みが出る症状のことです。
アイスをかじったときにズキンと痛んだり、歯ブラシが当たると歯がぴりぴり、チリチリしたりなど、歯に刺激が加わった時に現れ、1分ほどで痛みが治るのが特徴です。
また、虫歯治療やホワイトニング(歯の漂白)のあとに知覚過敏を発症することもあります。
その場合は単なる知覚過敏ではなく、歯の神経が歯を削ったり歯の表面に強い薬液を使用することで一時的な炎症を起こしている可能性が高いですが、基本的には健康な状態に戻ります。
知覚過敏は歯の内側にある象牙質(ぞうげしつ)と呼ばれる層が露出し、刺激が歯の神経に伝わりやすくなることによって生じます。
歯の基本構造はエナメル質、象牙質、セメント質の3つの組織で構成されています。
歯の表層である、とても硬いエナメル質は刺激を受けてもしみるような痛みがでることはほとんどありません。
しかし、硬いエナメル質がなんらかの原因で削れてしまうと
中にある象牙質が露出し、象牙質を構成する象牙細管という部分が開口してしまいます。
この開口した象牙細管が知覚過敏の発症と関係しているとされています。
露出した象牙質の写真の一例です。
歯の下部は歯肉縁付近の象牙質が露出していることから黄色がかった色合いをしており、この色合いはエナメル質により白く見える上部の色とは異なります。
知覚過敏が発症するメカニズムとしては、現在少なくとも4つほど説が唱えられていますが有力な説として「動水力学説」というものがあります。
象牙質の中には無数の象牙細管という直径0.8〜2.2マイクロメートルほどのとても細い管が集まっています。管の中は象牙細管内液という液体で満たされており、この管は歯の中心にある神経(歯髄)につながっています。
エナメル質に象牙質が覆われていれば象牙細管内液が移動することはないのですが、
なんらかの原因で象牙質が露出して、象牙質表面に刺激が加わると、象牙細管内液が象牙質の表面側に移動します。(外向き移動)
外向き移動することによって象牙質と歯髄との境目に存在するAδ繊維の自由神経終末が興奮し、ピリピリとした不快な痛みが発生します。
専門用語で説明すると、機械的な刺激によりイオンチャネルが解放され、Na+ イオンが細胞に侵入して活動電位が開始されるようになります。
知覚過敏は象牙質の露出で起こることがお分かりいただけたかと思いますが、
そもそもなぜ、ダイヤモンドと同じくらい硬いと言われているエナメル質がなくなり、象牙質が露出してしまうのか、知覚過敏の本当の原因について説明していきます。
健康な歯肉の状態では歯の根っこは歯肉に覆われており象牙質は露出していません。
しかし以下のような要因で歯肉が退縮してしまうと、歯肉と一緒にセメント質も失われてしまい、歯の根っこの部分にはエナメル質がなく、象牙質が露出し、刺激を受けると痛みが出てしまいます。
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯を支える歯槽骨が溶けることで一緒にや歯の周りの歯ぐきが下がってしまう病気です。
歯と歯肉の境目の清掃が行き届かないでいると、
そこに多くの細菌がとどまり歯ぐきが炎症を起こして赤くなったり、腫れたりしますが痛みはほとんどの場合ありません。 (歯肉炎)
痛みがないため、気付かずに進行してしまい歯を支えている骨が溶けることにより、膿がでたり歯が動揺してきて、最後には歯を抜かなければならなくなってしまいます。
また、歯周病の治療により歯周ポケットが正常値に戻ったとしても、歯ぐきの位置は歯周病により骨が溶けた後の位置になるため、歯肉は下がり、象牙質が露出していまいます。
歯周病についての詳しい記事はこちら
毎日の歯磨きは大切ですが、歯ブラシの当て方によっては歯ぐきに影響があります。
歯ブラシをゴシゴシと強い力で当ててしまったり、電動歯ブラシを押し付けてしまったりすると毎日の歯ブラシで歯ぐきが下がり、象牙質が露出してしまいます。
酸性の食べ物、甘いジュースやお酢などの飲み物を長時間かけて摂取することにより歯の表面を覆っているエナメル質が溶けて象牙質が露出してしまいます。
そのことを「酸蝕症」といいます。
通常口腔内はpH6.8〜7.0の中性です。 エナメル質はpH5.5以下になると溶けやすくなります。さらに中の象牙質はpH6.0〜6.2というより中性に近い状態で溶け出してしまいます。
酸蝕症の原因は、体内から口に酸が出る等胃液による内因性のもの、酸性度の強い飲食物を口にする外因性のものの2つに分けられます。
内因性には胃食道逆流症など胃や食道の病気、摂食障害による嘔吐などがあります。
胃酸の口腔内逆流で長時間口の中が酸性に傾いてしまうことにより酸蝕歯になりやすくなります。
外因性は酸性度の高い飲食物やお薬、サプリメントなどの過剰な摂取などがあります。
とくに炭酸飲料や栄養ドリンク、スポーツドリンクなどを日常的に良く飲む方は飲み方に注意が必要です。
Tooth wearとは、歯がなんらかの理由によって摩耗してしまう疾患を総称したものです。
加齢や食いしばり、歯ぎしりをすることにより歯がすり減ってしまいます。夜間の歯ぎしりや食いしばりが強い、ストレスなどで食いしばってしまっている、日中上の歯と下の歯が接触してしまっている、噛み合わせにより1部分の歯に負担がかかってしまっているなどによりエナメル質が欠けて象牙質が露出してきます。
象牙質の露出がある・ないかかわらず、生活歯のホワイトニングを受けた60%の人に痛みが発生するといわれており、一時的に、ホワイトニングに用いる過酸化水素・過酸化尿素などの薬剤によって知覚過敏の症状が起きることがあります。
自宅で行うホームホワイトニングは薬剤の濃度が低くなっているため、知覚過敏が起こりにくいですが、装着時間を規定の時間より長く行ってしまうことにより強くしみるため注意が必要です。
この場合は熱すぎるものや冷た過ぎるものを避けて歯の神経(歯髄)に炎症を起こさないように注意すれば、時間経過で痛むことはなくなります。
短期間で消失するものではありますが、1週間程度経っても強い痛みが治らないようであれば、早めに歯医者さんに相談してください。
知覚過敏ケアのはみがき粉には、硝酸カリウムや乳酸アルミニウムという薬剤が配合されています。
硝酸カリウムから出るカリウムイオンは歯髄神経の脱分極を起こすことで、その活動電位を不活性化します。そうすることで知覚過敏による刺激の反応を鈍くし緩和させる効果があります。
乳酸アルミニウムは神経に通じている象牙細管を封鎖して、刺激を防ぐ効果があります。
即効性はありませんが、毎日使用することで徐々に症状が収まることが期待されています。
成分に含まれるシュウ酸により象牙質細管に蓋をする製品が中心です。シュウ酸がエナメル質もしくはセメント質のハイドロキシアパタイト(カルシウム)と反応することにより、生成されたシュウ酸カルシウムの結晶が象牙細管に蓋をします。
保険適応で比較的安価に行うことが可能です。
当院ではスーパーシールを使用しております。
以下スーパーシール商品ページより
歯科用知覚過敏抑制材料 ・主成分「シュウ酸」は、歯質のカルシウムと反応し、生体親和性のある不溶性の「シュウ酸カルシウム結晶」を形成して知覚過敏を抑制します。 ・「5秒間こすり塗り、3秒間エアーブロー」 簡単操作・時間短縮を実現しました。 ・窩洞形成後の知覚過敏抑制 ・SRP・PMTC 前後の知覚過敏抑制 ・幅広い知覚過敏の症例に使用してください
象牙質が露出している部分に知覚過敏を抑制するための薬を塗布した後、強い素材のプラスチックで埋めて、刺激を伝わりにくくする方法(ダイレクトボンディング)があります。
ダイレクトボンディングとは、白い詰め物を歯に直接(ダイレクト)接着する(ボンディング)技術を用いて歯を修復する治療法のことです。
審美性の高い修復用プラスチックを直接歯に盛りつけていき、天然歯のような美しい色調や本来の歯の形態を回復します。こういった材料で埋めることで失ったエナメル質の役割を果たし、刺激を伝わりにくくします。
保険治療でできるコンポジットレジン修復(CR)は材料が硬化する際に大きく収縮することによりできる隙間から虫歯になるリスクが上がるため、治療の際は注意が必要です。
しみやすいからといって安易に収縮率の高いCR(コンポジットレジン)を詰めてしまうと以下のような虫歯になるリスクがあるため、注意が必要です。
歯科で取り扱うEr:YAGレーザーは水に対する吸収特性が高く、歯質の蒸散時に開口してしまった象牙細管を封鎖する作用があります。
エビデンスは確立していませんが、臨床的に有効性が認められています。
知覚過敏について症状や原因、対処方法についてご紹介しました。
自分では知覚過敏だと思っていたとしても、実は虫歯であったり歯が割れてしまっている時もあります。そうなると早い段階での治療が必要となります。知覚過敏かな、と思ったら自己診断はせずに歯医者さんにいき、レントゲンなどの検査をしてもらいましょう。
また、最後の方に治療法として紹介をしたダイレクトボンディングを扱う歯医者は限られていますので、ダイレクトボンディングを取り扱っているかを医院のホームページで確認することをおすすめします。
ご自身では虫歯なのか知覚過敏なのかご不安になることもあるかと思いますので歯科の定期健診の際にご相談ください。
私たちは、歯周病専門のクリニックとして虫歯治療から噛み合わせまで、 患者さま一人ひとりに合わせたトータルな治療をご提案し、患者様の満足を第一に最後まで治療します。
初診のお申し込みは、24時間WEBから可能です。 皆様のご来院を心からお待ちしております。 http://kanamorisika.com/yoyaku24h/