ボトックス治療
ボトックス治療は、しわ取りや小顔効果などの美容医療でご存じの方も多いのではないでしょうか。
歯科医療ではボトックス治療により「歯ぎしり・食いしばり」「顎関節症に伴う不快症状(咬筋のこわばりや顎関節の痛み)」の改善が期待できます。
ボトックス治療とは?
ボトックス治療とは、ボツリヌス菌から分離したボツリヌストキシンというタンパク質を用いて、筋肉の収縮を抑制する治療法です。
「ボツリヌストキシン」は筋肉の働きを抑制する作用があり、さまざまな疾患の治療薬として用いられています。
筋肉の働きを抑制することで、表情筋や咬筋の過剰な収縮によるさまざまな症状を改善することができます。
ボツリヌストキシンは一定量以下であれば毒性がほとんどなく、副作用も少ないため安全性の高い治療薬です。
ボトックス治療では、細い注射針を使用するので痛みがほとんどなく、注射跡が残る心配もありません。(一時的な内出血等が生じる恐れはあります。)
また、ダウンタイムがなく治療時間も15〜30分と短いため、仕事や日常生活に支障をきたすことが少なく手軽さが特徴的です。
ボトックス治療の効果
歯ぎしり・食いしばりの改善
歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中または日中の無意識のうちに、強い噛みしめをしている状態のことをいいます。歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎に大きな負担がかかるため、さまざまなリスクがあります。
歯ぎしりや食いしばりのリスク
- 歯が削れたり欠けたりする
- 知覚過敏になる
- 詰め物や被せ物が取れる
- 顎に痛みや違和感を感じる
- 歯周病が悪化する
ボトックス治療は顎の筋肉の緊張を緩和する効果があるため、ナイトガードだけでは改善されなかった症状もボトックス治療なら改善することが期待できます。
顎関節症に伴う不快症状の改善
顎関節症の症状には「口を開け閉めするときに音が鳴る」「口が開けにくい」などがあり、場合によっては日常生活に支障をきたす場合もあります。
ボトックス治療で顎の筋肉を緩めることで噛みしめが改善され、顎関節症による痛みや不快感が軽減されます。(ただし重度の顎関節症の場合は、ボトックス治療だけでは改善しないことがあります。)
エラの縮小
ボトックス治療で咬筋の緊張が緩和されると、エラ部分んの輪郭が引き締まって小顔に見えることがあります。
咬筋は、食べ物を噛むために使用される顎の筋肉で、大きく発達すると顎のラインが強調され、エラが張った顔立ちになります。
ボトックス治療は、咬筋にボツリヌストキシンを注射することで筋肉の収縮を抑制します。
骨格が変わることはありませんが、エラの張りが小さくなることで小顔効果を期待できます。
肩こりや頭痛の改善
顎の筋肉の緊張状態が続くと、頭や肩にも影響して頭痛や肩こりを引き起こす場合があります。
ボトックス治療で筋肉の緊張状態が改善されると、結果的に頭痛や肩こりも改善される可能性があります。
ボトックス治療の効果時間
ボトックス治療の効果は個人差はありますが、4か月〜6か月ほどです。
効果を持続させるためには、定期的な治療が必要になります。
また、1回の治療で症状の改善を十分に実感できないこともあり、効果を実感するまでに複数回の治療が必要になることもあります。
ボトックス治療の流れ
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STEP1診察
問診でアレルギーの有無や病歴をお聞きし、噛み合わせや顎の筋肉・関節の状態を確認して、治療の可否を判断します。
症状や治療の目的、治療方法、副作用や合併症などを説明したら、同意書に署名をいただきます。 -
STEP2準備
患者さまの症状に合わせて注射の濃度や量を調整し、打つ場所にマーキングをします。
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STEP3注射
マーキングした部位を消毒したら、痛みの緩和のために冷却を行い、細い針を使って薬剤を注入します。
使用する針は採血などに用いる針とは違ってかなり細いので、ほとんど痛みを感じることはありません。 -
STEP4気分不良等がないか確認
施術による気分不良等、特に異常がなければ治療は終了です。
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STEP5定期検診
経過を観察するために、治療後も定期的に診察を受ける必要があります。
効果や副作用の状態を確認し、必要に応じて治療方法の調整をおこなうこともあります。
診察を除いたボトックス注射の施術時間は15〜30分です。
効果が出始めるまでには2〜3日程度かかり、1週間後には効果を実感される方も多くなります。
3週間〜1か月ほど経った頃には効果が最大限になり、歯ぎしりや食いしばり、顎関節症の症状の軽減を感じられるでしょう。
効果は4〜6か月ほど持続しますが、筋肉の発達具合やボトックス治療後の戻りの早さには個人差があるので、治療間隔は医師と相談しましょう。
ボトックス治療の副作用
アレルギー反応
ボトックス注射に含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こす可能性があります。
顎の筋力低下
注射を受けた部位の筋肉が弱くなり他の筋肉を使うことが多くなるため、噛みにくくなったり、口を開けにくくなったりすることがあります。
特に初回の1か月間は、「噛み切れない」「顎のだるさ」を感じる場合があります。
経過とともに慣れていくので、心配しすぎることはありません。
表情の変化
ボトックス注射は筋肉の緊張を緩めるため、口角が上げづらく、一時的に表情が不自然になったり、違和感を感じたりすることがあります。
注射部位の腫れや痛み
注射部位に腫れや痛み、内出血が起こる場合があります。
通常、2〜3日で自然に治まりますが、場合によっては1週間〜10日ほどかかる場合もあります。
症状が長引く場合はアレルギーの可能性もあるので、しばらくしても腫れや痛みが引かないときは医師に相談しましょう。
頬のこけや肌のたるみ
筋肉が収縮すると頬骨が目立ってしまい、頬がこけて見える場合があります。
また、皮膚の薄い方やご年配の方は、皮膚が余ることにより肌がたるむ可能性があります。
リスクを軽減するためには、適切な量の薬剤を注入する必要があります。
ボトックス治療の注意点
- 治療前にアレルギーの有無や病歴、服用中のお薬を医師にお伝えください。
- 治療当日〜2,3日は血行が良くなる行為は避けてください。
- 妊娠中や授乳中の女性は、治療を受ける前に医師に相談してください。
- 妊娠予定の女性は投与後、2回の月経が終わるまで避妊が必要になります。
- 男性の場合は、治療後3か月は避妊しなければなりません。
ボトックス治療が受けられない方
- ボトックス治療でアレルギー反応が出た方
- 筋弛緩作用のある薬を服用している方
- 妊娠中や産後3か月以内の方
- 重度の筋力低下や筋萎縮がある方
- 重篤な心疾患・腎疾患をお持ちの方
- 癌の治療中または治療後3か月以内の方
- 神経筋接合部疾患をお持ちの方
- 喘息など慢性的な呼吸器疾患をお持ちの方
- 緑内障の方
- 献血予定のある方
- 治療当日に体調が悪い方
注射を受ける前に、病歴や過去のアレルギー反応の有無、服用中の薬剤やサプリメント、妊娠中または授乳中であるか、妊娠の予定があるか、などを医師に詳しくお伝えください。
それらの情報をもとに、治療を受けられるかどうかを判断します。
ボトックス治療の料金
- 30,000円(税込価格33,000円)
基本的にボトックス治療は保険適用にならず、自費診療です。
ただし、医療費控除が適用される場合があります。
歯ぎしりや食いしばり、顎関節症の治療として受けた場合は、医療費控除の対象になります。しわ取りやエラ張りの改善などの美容目的で治療を受けた場合は、控除の対象にはなりません。
医療費控除は1年以内に医療費が10万円を超えた場合、申告すると所得税の一部が返ってきます。
詳しくは下記をご覧ください。
ボトックスをおこなった患者さまの症例
- 治療内容:
- こちらの女性は主訴として食いしばりが酷く、早朝に顎が疲れたり頭痛・肩こりの症状も出ていました。
また、現在まで発達してしまった咬筋の力を軽減させる為、対症療法としてボトックス治療を行いました - 治療期間:
- ボトックス注射を3ヶ月に一度3回、9ヶ月
- 費用:
- 1回33,000円(税込)
- リスク、副作用:
- 【アレルギー反応】
ボトックス注射に含まれる成分に対して、アレルギー反応を起こす可能性があります。
【表情の変化】
ボトックス注射は筋肉の緊張を緩めるため、口角が上げづらく、一時的に表情が不自然になったり、違和感を感じたりすることがあります。
【注射部位の腫れや痛み】
注射部位に腫れや痛み、内出血が起こる場合があります。
通常、2〜3日で自然に治まりますが、場合によっては1週間〜10日ほどかかる場合もあります。
症状が長引く場合はアレルギーの可能性もあるので、しばらくしても腫れや痛みが引かないときは医師に相談しましょう。
よくある質問
ボトックス治療は痛いですか?
ボトックス治療は注射針を使用するため、少し痛みを感じることがあります。
しかし、使用する針はかなり細いのと痛みの緩和のために冷却してから行うのでほとんど痛みを感じずに治療を終える方も多いです。
ボトックス治療は安全ですか?
ボトックス治療は、副作用や合併症のリスクは比較的低いとされています。
ただし、アレルギー反応のリスクなどがあるため、施術前には必ず医師の診察を受け、リスクや副作用について十分に理解した上で治療を受けてください。
注射後はすぐに帰宅できますか?
注射後は5分ほど止血をおこないます。止血が確認でき、アレルギー反応がみられなければそのまま帰宅していただけます。
注射後に気を付けることはありますか?
注射した当日は、飲酒やサウナ、激しい運動は避けてください。ボツリヌストキシンは熱に弱い成分です。熱によって変性する可能性があるため、身体が温まるような行為は避ける必要があります。特に当日は、注射部位の内出血や腫れを悪化させる可能性があるので注意が必要です。
また、お顔のマッサージやうつぶせ寝なども避けましょう。薬剤が注射部位以外に広がることで効果が減少するだけでなく、表情が硬くなったり、皮膚がたるんでしまったりする可能性があるからです。
上記の行為は、注射後1週間ほど控えましょう。
注射後はいつも通り食事をしても大丈夫ですか?
注射後の食事は、固い食べ物を避けてください。ボトックス治療は咬筋の動きを抑えて、症状を改善します。しかし、治療後に固い食べ物を食べてしまうと咬筋を鍛えることになってしまうので、効果を減少させることにつながりかねません。
神経質になりすぎることはありませんが、強い噛みしめが必要になる食事は避けると良いでしょう。
ボトックス治療を途中でやめたらどうなりますか?
ボトックス治療を中断すると、抑えられていた咬筋の動きが再開するので、歯ぎしりや食いしばりが発生することがあります。
歯ぎしりや食いしばり、顎関節症の症状を抑え続けるには、継続的に治療する必要があります。
ボトックス治療はいつまで続ける必要がありますか?
ボトックス治療は、咬筋の発達が抑えられてきたら注射の間隔をのばしていきます。治療回数を重ねると、だんだんと咬筋の働きが弱くなっていきます。
咬筋の動きが戻りにくくなったら、治療を終了します。
定期的に通院し、再び症状が現れたら注射を打ちます。