2024/06/06
01.お知らせ, 04.症 例, 06.歯周病, 07.歯周外科処置, 09.歯周組織再生療法, 10.精密根管治療, 13.エクストルージョン(歯根挺出法)
品川区の歯医者 かなもり歯科クリニックの歯科医師 林です。
当院は歯周病治療専門のクリニックとして他院で「残せない」と診断された歯を残す方法はないか、と相談される機会がとても多いです。
※このようなご相談の場合、他院で診断を受けているためご相談自体が保険適応ではなくセカンドオピニオン(自由診療)となります。セカンドオピニオンの説明については当院リンクをご参照ください。
本日は「なぜ歯を抜かないといけないと診断されたか?」の原因別に、選択しうる対処方法・治療方法をお伝えしたいと思います。
もし歯科医院で(親知らずや矯正のための抜歯の場合を除いて)「抜かないといけない」と診断された場合、その理由はいくつか考えられ、それぞれが入り混じった複合的なケースなどもあります。
その原因は
虫歯が歯肉の深くまで進行している場合
歯周病が進行している場合
根の炎症が治まらない場合
根の炎症と歯周病の進行が複合的な場合
歯が割れている場合
に大別されます。
以下ではそれぞれの原因によっての取りうる対処法を説明したいと思います。
虫歯が歯肉の深いところまで進行している状態を歯肉縁下う蝕と言います。
歯肉縁下う蝕があると虫歯を完全に除去できなかったり、被せ物を精密に作ることができないなど、様々な問題が生じるため抜歯と診断されることがあります。
その場合、当院では歯冠長延長術という歯周外科手術をご提案することが多いです。
歯冠長延長術の詳細な術式と症例については当院のホームページを御覧いただきたいですが、要点をまとめると「歯肉の上に被せ物を作るのに適した健全な歯質を確保する」ための手術となります。
上の画像のように歯肉の上に健康な歯質を確保するためには歯槽骨の上に一定量(大体3mm以上)の健全な歯質を確保する必要があります。
そのために歯肉を開いて歯槽骨の削除を行います。
このような外科手術を行うことで被せ物を精密に作る条件が整うので、その後被せ物により咬み合わせ機能の回復を行います。
より深く虫歯が進行した場合は矯正的に歯を引っ張り上げる方法(挺出:エクストルージョン)を併用するような場合もあります。
ただ、あまりに残っている根の状態が悪い場合は適応でない場合もありますので担当医にご相談ください。
歯周病が進行して歯を支持する歯槽骨がなくなります。
歯槽骨が失われることにより歯がグラグラしたり炎症を起こしたりする場合、保存できないと判断して抜歯を勧められることがあります。
当院では、適応の場合に対して歯周組織再生療法を提案することがあります。
歯周組織再生療法の術式の要点は「歯茎を切開しないと除去できない歯石を見える状態でしっかりと取り、骨より治癒の早い上皮が入りこまないように骨面を特定の材料で被覆して骨の再生を促す」ことです。
言葉で表すと単純ですが、適応症例や予後の予測、また術前のプラークコントロールや術後のメンテナンスなど様々な要素が絡む手術です。
当院は歯周病専門のクリニックとして歯周治療のプロトコルに則った診断と術式を提供しています。
治療の成功例だけ見ると「歯周病はどんな状態からでも治る」と思わせるような夢のある治療に感じられますが、どのような歯、どのような状態でも再生療法で保存できるわけではありません。
その診断と見極め、そしてご自身のセルフケアが大変重要となる治療ですので、その点をご理解いただきたいです。
一度神経を取る治療をしたあとに歯の根先端の炎症が再発し、噛んだときの痛みや歯茎の根元に膿が溜まったりすることで不快感が強くなり、抜歯を勧められることがあります。
根管治療は歯を保存するうえでとても重要な治療ですが漫然と従来の保険治療で根管治療を行っても問題となる症状が改善できるとは限らないのが現状です。
根管処理歯における根尖部X線透過像の発現率
(2005.9〜2006.12 東京医科歯科大学)
当院のHPにも掲載していますが、東京医科歯科大学付属病院による、日本における保険治療での根管治療の再発率(失敗率)を示したグラフです。45~70%の歯において再治療が必要な状態になっていることが分かります。
精密根管治療はラバーダム防湿という方法で歯を他の部位から独立させ、マイクロスコープを用いて強拡大下で専用の器具を使用して根管治療を行う方法です。
精密根管治療を行うことで治療の成功率は上昇することが見込めますが、過去の治療痕や解剖的な問題でどうしても根尖部の感染を取り除けないようなケースがあります。
そのような場合は歯根端切除術や再植術によって外科的に感染を取り除くこともあります。
精密根管治療や外科的な根の治療は歯の保存のためにはとても有益な方法ですが、ただ単にそれだけでは安定した予後が得られません。
CTやレントゲンでの診査、根の解剖的な状態及び根の中だけではなく被せ物(上部構造)をどれだけ安定して行えるかを総合的に判断した上で予後を予測して行うものです。
根の治療が成功しても歯として短命であるなら残すより抜歯したほうが合理的な場合も多々あります。
詳細は担当医にご相談いただきたいです。
上記で示したような歯周病と根の炎症が混在しているケースがあります。
これを歯周・歯内病変と言い、病態によっては治りにくい状態の一つです。
レントゲンで見たときに根の先端まで骨が溶けているので単に歯周炎(歯肉の外側からの感染)と診断されることもありますが、実は歯の中の歯髄(神経)が死んでいて歯槽骨の炎症を起こしているようなケースです。
神経の炎症・汚染が原因で骨が溶けている場合は外からいくら歯周病治療(歯石取り等)をしても歯の症状は改善しません。上に述べたような精密根管治療を行うことで改善が認められることもあります。
どちらが原因になっているか鑑別する一つの方法に歯髄電気診など、歯の神経が生きているかどうかを調べるテストがあります。
これは歯に弱い電気を流して痛みがあるかどうかで神経の生死を鑑別する方法ですが、一つの指標として利用します。
ここで電気を流しても痛みがない、もしくは鈍い感覚しかない場合は神経は死んでいると判断して神経の治療を行います。
両者が混在しているようなケースでは精密根管治療を行った後に歯周組織再生療法を行うこともあります。
いずれにしてもどちらからの感染が主要因となっているかの診断が重要となってきますが、あきらかに歯周病由来と判断されるケースを除いては先に根管処置を行って治療の効果を確認してから歯周病治療を行うことが推奨されています。
このように、歯周病治療を希望したのに根の治療を勧められるような場合はしばしばありますが、治療の成功のために必要不可欠なステップであることが多いのでご理解いただければと思います。
軽度のヒビ(クラック)であれば保存できる可能性がありますが、当院では基本的に割れてしまった歯には抜歯をお勧めしています。
亀裂に入り込んだ感染を取り除くと歯は物理的に弱くなるので噛む力に耐えて機能させるのはとても困難だからです。
ただ、抜歯後の骨を保存するような方法もあるので、当院では抜歯を行う前にその後の処置方針を固めてから抜歯することをお勧めしています。
以上、「保存が難しいと言われた歯を保存する方法」をお伝えしましたが、歯を無理に残すほうが問題となるケースもあります。
具体的には
・ご自身でのメンテナンス(清掃)が困難な場合
・残存させることで顎の左右バランスを著しく損なう場合
・かみ合わせにとってストレスとなるような位置にある場合
・その歯を残すことによって隣の歯に悪影響がでることが想定される場合
・長期予後が望めず治療にかけた時間やコストが大きく無駄になる恐れがある場合
などです
日本の保険診療のシステム上、ご自身の残存歯が多い方が価値が高いと考える傾向もありますが、当院として重要視しているのは患者様が長い人生を通して快適にお食事を楽しめる環境を提供することです。
歯を抜いたあとに義歯やインプラントと上手に付き合いながら長くお食事を楽しむのも大変価値があることと考えています。
もちろん歯周治療専門のクリニックとして天然の歯をできるだけ多く残すという信条は常に念頭に置いておりますが、長期的に安定した口腔内の環境をご提供できるためには何がベストか、という視点で治療のご提案を行っております。
セカンドオピニオン等できちんとご相談、ご納得いただいた上で上記のような治療を進めていくことをお勧めいたします。
以上のように、それぞれ抜歯と診断された原因別の対処法を説明いたしましたが、大まかにまとめると
虫歯が歯肉の深くまで進行している場合→歯冠長延長術
歯周病が進行している場合→歯周組織再生療法
根の炎症が治まらない場合→精密根管治療と外科的根管治療
根の炎症と歯周病の進行が複合的な場合→精密根管治療と歯周組織再生療法
歯が割れている場合→抜歯
となります。
これはあくまで大まかな分類となりますので個々のケースに応じた対応をご提案します。
まずは当院にご相談ください。
私たちは、歯周病専門のクリニックとして虫歯治療から噛み合わせまで、 患者さま一人ひとりに合わせたトータルな治療をご提案し、患者様の満足を第一に最後まで治療します。
初診のお申し込みは、24時間WEBから可能です。 皆様のご来院を心からお待ちしております。 http://kanamorisika.com/yoyaku24h/