自由診療と保険診療の違い
日本の健康保険制度について
歯科医院で自由診療を勧められると「費用が高くつく」「保険が効く治療で十分」と思われる方は少なくないと思います。昔から、『前歯は保険が効かない』とか『いい材料を使うと自費になる』という話を耳にしていたと思いますが、そういった治療部位や使用材料だけが2つの診療の差ではありません。
日本の医療保険制度とは
日本の医療保険制度は、国民のほぼ全員が加入し、国民の誰もがいつでも病院にかかれるということで「国民皆保険制度」と言われています。これは世界的にみてもとてもすぐれた制度で、その恩恵により、日本人の平均寿命は常に高いレベルで維持されていると言えます。
歯科の分野においても、この制度が作られた昭和30~40年ごろは「虫歯の洪水状態」に置かれていた多くの人々が救われました。安価な費用で、最低限の痛みを止める【治療】が受けられたからです。さらには、歯の神経を抜く、歯を抜く、入れ歯を作るといった【治療】も、すべて保険内で受けられました。
しかし現代においては、虫歯を削ることや歯周病で歯を抜くことよりも「虫歯や歯周病にならないように予防すること」の方が重要視されています。ところが、こういった予防処置のほとんどは、残念ながら健康保険の適応外になっているのが現状なのです。
真の意味での治療とは
歯科保険制度の中心をなすのは、未だに「歯を削って詰めること」「痛くなったら神経を抜くこと」「悪くなった歯を抜いて入れ歯を作ること」などであり、これらが【治療】と呼ばれています。しかし、少し掘り下げて考えてみると、ここまでに【治療】と記したことは、実は「真の意味での治療行為ではない」といえます。
治療であるならば、文字どおりに病気が治らなければならないはずですが、歯を削って詰めても、隙間から虫歯が再発するようでは治ったことにはなりません。しかも、通常同じ歯を5回再【治療】すると歯の傷は大きくなり、その歯は抜かなくてはならなくなる(sheiham,1994)と言われています。
私たち歯科医師は、常に「自分が受けたい歯科治療」「自分の家族に受けさせたい歯科治療」とは何かを考えます。そのときに最も重要に思うことは、「一度治した歯が、ずっといい状態で長持ちすること」です。それこそが「真の意味での治療」ではないでしょうか。
かけられる時間の違い
今の日本の健康保険では『時間』に対する評価はありません。 たとえば1本の虫歯を治療した際に、じっくり1時間かけて治療しても、または10分で済ませても、保険診療においてはその治療費に差が生じることはないのです。
赤字覚悟のボランティアであれば、保険診療でもそういった時間をかけた丁寧な治療が可能かもしれません。しかし、医院を維持するために必要な採算性を度外視できない現実があり、低い保険の評価の中では良質な医療を提供するのに限界があると言えます。
ここが、自由診療(保険外診療)を選択された場合に大きく異なる点です。私たちのクリニックでは、治療にかける時間はあくまでも「その歯にとって理想的な治療の行程に必要な時間」の総計で決めています。
保険診療の限界
虫歯の取り残しがないように『丁寧』に、歯を削り過ぎないように『慎重』に、虫歯が再発しないように『確実』に。こうした治療の実現には、虫歯1本に対して最低でも1時間から1時間半程度のご予約を確保させていただいています。
また、根だけしか残っていない状況の末期的な歯を、根管治療で抜かずに残すためには、一度に2時間以上の治療を行うこともあるのです。そして、それだけの時間をかけてこそマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)などを効果的に活かすことができ、精密な修復処置が成功するのです。
大切なのは、こうした時間の制約のない『丁寧』『慎重』『確実』な治療を行うことで、初めて二度と再治療が必要な状況を起こさない健康状態を取り戻し、歯を長く持たせることが可能になってくるということです。
『保険と自費の違いは、治療する部位や詰めたり被せたりする材料の違いだけ』という誤った認識が蔓延しています。もちろん、材料や使用する機器などが違うことも事実ですが、それだけではなく、こうした『時間』の要素が実は大きなウエイトを占めているということを、ぜひ皆さまに知っていただきたいと思います。
そして「より良い治療、より確実な治療とは何か」をお考えいただき「将来にわたって、長く快適に過ごすための治療」を受けていただけると幸いです。
根管治療の保険治療と自由診療の違い
歯の神経を抜く治療の精度は保険治療と自由診療で大きく異なっています。
そのような高い技術力を持つ技工士は保険治療の技工物を製作する事はありません。
それは芸術的に素晴らしい東照宮を建築した宮大工にほったて小屋をできるだけ安価に製作してもらうことと変わらないからです。
歯の神経を抜く治療は主に虫歯が深かった場合あるいは虫歯が進行してお痛みが取れない場合などに行われる処置です。
そもそも神経を抜かなければならない状態にならないほうがいいわけですが残念ながらお痛みが出てしまう,虫歯が深くて神経の保存が難しいなど神経を抜く治療が必要になることが多いです。
神経の治療は保険治療の場合基本的に裸眼で行うことになります。
精密な根管治療を行う場合ラバーダム処置を行い唾液が1滴も入らない環境作りの為にルーペもしくはマイクロスコープを用い,10倍から約25倍までの拡大視野にて神経の除去を行っていきます。
あくまでもイメージですが根管治療は唾液という名の波の打ち寄せる海辺で動物の剥製を作るイメージです。
その動物の剥製がいかに腐敗しない状況を作るかということが歯科医師の役目となります。
あくまでも文献的な成功率ですが裸眼で行った場合7割が失敗3割程度の成功率と言われています。
どうしてそれほどの成功率の差が出るのでしょうか。
それは神経を除去する治療と言うのは小指の先1センチほどの神経と血管を裸眼で抜くと言う作業に同等するからです。
指と歯も同じ組織ですから様々な方向に神経血管が走行しております
それを全て見つけきって除去するのがいかに難しいことか皆さんでもご理解いただけると思います。
しかもそのような条件で何度も何度も根管治療する事は残念ながら成功率を下げる1つの要因になっております。
精密根管治療の成功率
初回治療(抜髄治療) | 94% (研究者/Weiger,et al. 報告年/2000年) |
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感染根管治療 | 72〜92% (研究者/Friedman,et al. 報告年/2008年) |
再根管治療 | 62〜87% (研究者/Friedman,et al. 報告年/2008年) |
歯の神経を抜く治療の精度は保険治療と自由診療で大きく異なっています。
そのため根管治療はできるだけ回数を少なくクオリティーを上げた長時間の治療の方が成功率が上がることが立証されております。
精度の高い治療を行っても94%程度の成功率と文献は示しています。
根管治療は非常に難しい治療ですので再治療になればさらに20%程度の成功率が下がることが文献的に証明されております。
根管治療は可能な限り少ない回数で、必要であれば長時間行い、再治療の必要のない根管治療を行うことが歯の寿命を長くする唯一の方法だと考えております。
費用を抑えるため根管治療を保険で行ってかぶせものだけしっかりとしたジルコニアクラウンを入れたとしても再治療になる確率は70%程度ということが示されております。
根管治療と被せ物の精度の関係性
根管治療の精度 | 被せ物の精度 | 根管治療成功率 |
---|---|---|
高精度 | 自費の被せ物 | 91.4% |
高精度 | 保険の被せ物 | 44.1% |
低精度 | 自費の被せ物 | 67.6% |
低精度 | 保険の被せ物 | 18.1% |
(H.Ray, M.Trope Published 1995)
そのため根管治療はしっかりとした治療を行いたいと言うご要望に沿って当院では3台のマイクロスコープを用いて治療に当たっております。
かぶせ物のみ自由診療で根管治療は保険治療でと言う組み合わせが良くないと言うことが上記の条件でお分かりになるかと思います。
担当する技工士による違い
日本人技工士は世界的にも評価が高く,海外に出ていかれる技工士も多くいらっしゃいます。
芸術的に上手な技工士,総合治療を行える技工士は日本に10人程度しかおりません。
高い技術力を持つ技工士は保険治療の技工物を製作しないだけではなく数ある歯科医院から製作依頼を受けるため、歯科医院の方が選ばれる立場にあります。
もちろんそのような技工士は費用も高くなる傾向があり、歯科医院も高いクオリティーの作業が要求されることが多いです。
素晴らしい技工士が作った技工物は精度が高く天然のと見分けのつかないほどのクオリティーを持った長持ちするものとなります。
当院では自由診療のみの技工物を製作する高い技術力を持つ技工士と提携しております。 これにより高い精度の治療、長期的な予後、長持ちする治療となるのです。