かみ合わせ治療・咬合診査
顎関節とかみ合わせ(予備的な咬合診査)
一本の虫歯を治療して終了できる場合であれば、それほど考慮する必要が無いかもしれませんが、全体的な虫歯や歯周治療や欠損部分の治療を行う場合、何を基準に治療を行っていくか考慮する必要があります。
具体的には、かみ合わせを中心に治療を行うか、顎関節が安定する位置を考慮に入れて治療を行う、という方法があります。
最初は顎関節も安定するかみ合わせです。
かみ合わせを入れ替えてみると、凸と凹があっていてかみ合わせはあっているように見えますが、実はかみ合わせの帳尻を合わせるために顎関節の顆頭が後下方にずれています。
この顎関節の無理な負担が、倦怠感・肩こり・睡眠障害・呼吸障害など全身的な不具合に繋がったり、無意識の歯ぎしりをおこし、次のような不具合が起きます。
顎関節への無理な負担による不具合
- 歯の表面が明らかに削れてしまっている
- なおしたところがいつも取れる
- 小臼歯の歯根が折れた
- 歯肉が下がって知覚過敏がひどい
- 虫歯でも何でもない歯がいたむ
- 冷温痛がひどく神経を抜かなければならない
顎関節のゆがみの原因
- 不良補綴物の影響
- 骨格的な問題を無視した歯科治療
(セラミック矯正・顎位を考慮に入れないスピード矯正など) - 成長期における無理な矯正(顎間ゴムによるミッドラインの補正)
- 経時的な治療プランのないその場その場の歯科治療における咬合平面の不正
- 治療中断による病的な歯牙の移動
- 不正咬合 開口など
- アンテリアガイダンス(前歯の理想的な咬合)の喪失
- 親知らず周囲・臼歯部の干渉
- 歯周病による病的な歯牙の移動
- 避けられないストレスによる咬合負担の増加
- 内科的因子による口腔環境の悪化
開咬・反対咬合の場合、奥歯を失うリスクが高い
開咬
反対咬合
東京歯科大学歯科矯正学講座2005年の報告によると、文京区において8020(80歳以降に20本以上歯が残存している)を達成した52人の口腔内を診査したところ、上下顎前歯の前後的位置関係において反対咬合、および上下的位置関係において開咬の方は0%でした。
限られた調査の中ではありますが、これは開咬及び反対咬合の方は80歳時点で奥歯を失ってしまっている可能性が高いことを示唆しています。
天然歯がどれだけ残っているか、適切な治療がなされていたかどうかなどの個人差はあると思いますが、当院では安定した口腔環境達成のためには可能な限り前歯の位置関係を正常咬合に近づけることを提案しています。
竹内史江、宮崎晴代、模擬悦子 他:Dental Prescale®を用いた8020達成者の咬合調査,歯科学報,105(2):154-162,2005
咬合診査方法
口腔内歯列印象採得 2~4種類
ICP
CRO
咬合採得 2種類
筋肉が安定する顎を中心とした咬合採得とかみ合わせを中心とした咬合採得。
フェイスボウトランスファー
咬合器に患者さまの顎の位置とかみ合わせの状況を再現させます。
咬合器付着 咬合診査
実際のお口の中の状況を咬合器に移行した状態で、正確なかみ合わせの状況を精査いたします。
ICP
CRO
ICP
CRO
インプラント ジルコニアセラミック
全顎治療の患者さまの症例
Before
After
顎関節への負担軽減方法
ハードスプリント・中心位ナイトガードの応用
ハードスプリント
このような場合、まず最初に顎関節の安定をえるためにスプリント療法をおこないます。
スプリント療法の予備段階としてハードスプリントというものを装着していただき歯周基本治療の間、早期の顎関節周囲組織の安定を図ります。
当院では全顎的な治療を行う場合、まずは予備的な咬合診査をおこない、顎関節の不具合を精査いたします。
中心位ナイトガード
安定した顎関節に基づいたかみ合わせの再構築をおこなっていくこともあります。
中心位ナイトガードは顎関節症において重症なケースの場合、装着していただきます。
ボトックスによる咬筋緩和療法
ボトックス治療は、しわ取りや小顔効果などの美容医療でご存じの方も多いのではないでしょうか。
歯科医療ではボトックス治療により「歯ぎしり・食いしばり」「顎関節症に伴う不快症状(咬筋のこわばりや顎関節の痛み)」の改善が期待できます。